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経済産業省に聞いてみました。原発って本当に必要ですか? in 2007

【経産省に聞いてみた、原発って本当に必要ですか? in 2007】 とあるウェブマガジンで書いた記事。数年を経ても面白い記事をピックアップしていきます。

先月号の特集『北朝鮮の核開発も脅威だが、そもそも日本の原子力発電って大丈夫なのか?』が大反響を呼んでいる。原子力発電のことって「聞いたことはあるけど、よくわからん」感じだったのだ。前回は「反対派」である藤田祐幸氏に話を聞いた。でも、物事を一方的な意見だけで判断するのは正しくない。今月は原発問題を考える特集の第2弾として、原子力発電政策を進める経済産業省に話を聞いた。

桜も終わった4月某日。霞ヶ関の経済産業省で、5人の官僚のみなさんがズラリと並んで取材に応じてくれた。事前に送った質問案が幅広かったので、細分化された分野の担当者が集まってくれたのだ。いろんなパンフレットのほかに、44ページに及ぶ手作りの資料も用意されていた。指定された取材時間は1時間。さて、どんな話が聞けるのだろう。

<質問に答えてくれた担当者所属部署>
資源エネルギー庁 原子力政策課
資源エネルギー庁 原子力立地・核燃料サイクル産業課
資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策室
原子力安全・保安院 核燃料サイクル規制課
原子力安全・保安院 原子力防災課
※個人名は非公表

日本には本当に原子力発電が
必要なんですか?

今、世界では資源獲得競争が激化しています。そもそも、日本のエネルギー自給率はわずか4%しかありません。自給率が低いといわれる「食料」でも、約4割は自給できているんですけどね。エネルギー自給率は食料の10分の1。ことに、石油はほぼ完全に中東に依存しています。

また、ここ数年は中国の台頭がめざましい。中国国内の電力需要は、2000年から2004年までの4年間で8439億kWhも増加しています。これは2005年度の日本全体の電力需要、9183億kWhにも匹敵します。増大する国内エネルギー需要をまかなうために、中東やロシアなど世界の石油を、中国が集めまくっているんです。

最近、原油が高騰しましたよね。以前、2回あったオイルショックのときには電力をどうするかが大問題になりました。でも、今回の原油高騰ではそれほどの騒ぎになっていません。1973年には日本の発電は約73%が石油に依存していました。それが、2004年は原子力が28%になり、石油は10%だけ。ほかに、石炭やLNG、再生可能エネルギーや新エネルギーなどをバランスよくミックスして電力を作り出していたことが、原油高騰による電力供給の混乱を回避する要因になっているんです。

地球温暖化の問題もあります。原子力発電は発電そのものでCO2を排出しません。燃料輸送などの際に少しCO2が排出されますが、石炭火力発電に比べるとその排出量はわずか40分の1程度です。クリーンで安定的に電気を供給するためのエネルギーとして、原子力発電が必要なんですよ。

太陽光とか風力。
再生可能エネルギーなら安心なのに?

今、日本には55基の原子炉があります。1基当たりの出力はおよそ100万kW。たとえばこれを太陽光発電に置き換えようとすると、約67平方km。おおむね山手線いっぱいの面積が必要です。風力発電では山手線の3.5倍の面積が必要になってしまいます。また、建設費用も原発が1基約3000億円に対して、太陽光発電で約6〜7兆円、風力発電でも1兆円かかると試算されています。原子力発電をすべて新エネルギーに代替するのは非現実的なんですね。

世界的な流れを見ても、地球温暖化の問題やエネルギーの安全保障の観点から、原子力に回帰してきています。チェルノブイリの事故以降、やや停滞していたんですが。たとえばアメリカは今後20基の原子力発電所を作ると発表していますし、ロシアやヨーロッパ各国も原子力発電所開発を再開しようとしています。また、インドや中国も原子力発電には意欲的。ベトナム、インドネシア、トルコ、エジプトといった国も原子力発電を始めようとしています。

編集部 ドイツでは脱原発を進めてるようですが?

ああ、ドイツでは以前、社会主義政党が政権を握った時に再生可能エネルギーへの転換を国策として打ち出したんですね。でも、現実には電力需要をまかないきれないから、周辺の国から電力を輸入しているんです。それが数年前にロシアからの電力供給がストップしてしまう騒ぎがあって。今は廃止を決めていたはずの原子力発電所の運転を延ばしたりしていますね。

「(反対派は)科学的根拠を持たずに反対を打ち出すばかり。エネルギー問題では、原子力も化石燃料もダメ、水力もダメ。再生可能エネルギーだけにするべきだと言う。しかし、簡単な算数ができれば実現が無理なのは明白だ」って。これは、かつて反対してた原子力発電の推進派に転向した、パトリック・ムーア氏(グリーンピース共同創始者)の言葉です。

日本の原子力発電所は
これからも増えるんですか?

国としては、2005年10月に閣議決定された「原子力政策大綱」で、2030年以後も発電電力量の30〜40%を原子力でまかなうことや、核燃料サイクルを推進し、高速増殖炉の実用化を目指すことを、基本目標として設定しています。

今後の建設については、全国で13基が計画されています。北海道電力の「泊3号」と、中国電力の「島根3号」はすでに建設中ですね。

編集部 そうは言っても、原子炉や発電所の新設には困難も多いですよね。計画では2007年3月に着工予定になっている青森県大間の原発建設も、難航していると聞いてますが。

地元との問題があって、少し遅れています。でも、今審査中なので順当にいけばもうすぐ建設は始められるでしょう。我々としては、13基の建設計画を、粛々と着実に進めていくことが重要だと考えています。

国民のみなさんに原子力発電のメリットを理解していただく活動にも取り組んでいかなければいけません。2006年8月にまとめられた「原子力立国計画」では、原子力発電を進めていく環境を整備するための、具体的アクションや取り組みを示しています。

エネルギーの元になる資源は有限です。貴重な資源を、どう活用すればハッピーになれるか。それが大事です。資源エネルギー庁としては、原子力だけを推進しているわけではありません。原子力発電もやるし、新エネルギーや再生可能エネルギー、さらには、日本が得意な省エネにも積極的に取り組んでいるんですよ。

ここが気になる一問一答 〜 その1
「六カ所村の再処理施設が怖いんですけど」

六ヶ所村の再処理施設や、高レベル放射性廃棄物の最終処分。まだまだ聞きたいことは山ほどある。ここからは、官僚のみなさんとのやりとりを、一問一答形式にまとめて、わかりやすく紹介していく。

ぶっちゃけ、六カ所村の
再処理施設は安全なんですか?

私ども(原子力安全・保安院 核燃料サイクル規制課)が「原子力規制法」に基づいて厳しく安全規制しています。六カ所村の再処理施設も、事業許可、建物や施設の認可、完成後の性能検査や保安検査を受けています。

再処理工場から排出される
放射性物質が怖いんですけど?

たしかに六ヶ所村の再処理施設から出る排ガスや排水は「クリプトン85」や「トチリウム」といった放射性物質を含んでいます。もちろん、それが環境や人体に与える影響はきちんと評価しています。周辺の住民が受けるであろうと想定される放射線の線量評価の数値は、1年間で0.022ミリシーベルトです。ちなみに、集団検診などの胸部X線で受ける放射線は約0.05ミリシーベルトですね。

それでもやっぱり、目に見えない
放射能って不気味なんです。

「クリプトン85」は気体なので、高さ150mの煙突で上空に排出し、拡散し稀釈されます。「トチリウム」は液体ですが、約3km沖合の水深約44mの海中に排出されるんです。また「クリプトン85」も「トチリウム」も、もし人の身体に入っても体内にとどまることはない物質なので、内部被ばく(体内の放射性物質からの放射線を受けること)の可能性は非常に低いと評価されています。

ここが気になる一問一答 〜 その2
「高レベル放射性廃棄物って……」

次は、高レベル放射性廃棄物についての一問一答。用語や論理について補足的に説明したいことは山ほどあるけど、グッと我慢しながら、できるだけシンプルに経済産業省の話をまとめてみたい。雄弁に説明されればされるほど、原子力発電のことが「わかりにくく」なるからだ。

高レベル放射性廃棄物
の問題は未解決なんでしょ?

使用済み核燃料を再処理して、ウランやプルトニウムを回収した後、再利用できない不要な廃液が残ります。高レベル放射性廃棄物ですね。我が国では、これをガラス固化して30〜50年冷却した後で、地下300mよりも深い安定した地中に埋める「地層処分」を進めていくことを選択しています。

とはいえ、広島型原爆200万発分の
放射性物質はヤバいでしょ?

ああ、それは藤田さんのご意見(前回特集の5ページ目参照)ですね。反対される方はよくそういったおどろおどろしい表現をされます。でも、放射能の線量としては同じようなレベルだったとしても、それを爆弾のように飛散させるのはなく、ゆっくりと時間をかけて減衰させていこうというのが地層処分です。

「地層処分」は絶対に安全と
言い切れるんですか?

放射性廃棄物の性質に合わせた処分方法は以前からいろいろ議論されてきました。「宇宙処分」は発射技術の信頼性などに問題があります。「海洋底処分」は廃棄物などの海洋投棄を規制するロンドン条約によって禁止されています。南極の氷床の底に埋める「氷床処分」は氷床の特性が不明確で、南極条約によって処分が禁止されました。また、人間が「長期管理」する方法は将来の世代にまで監視の負担を強いることになる。

「地層処分」は最も問題点が少なく実現可能性が高い方法として選択されたのです。現段階で最適な方法であることが世界共通の認識です。

でも、地震が起きると
危ないですよね?

地表では大きく揺れる地震も、地下数100mの安定した岩盤の中では、揺れも小さくガラス固化体が受ける影響は小さいものです。数万年という単位で見ると活断層などは動きますが、その数万年の間に何もなかったところにいきなり活断層や火山ができるといったことはあり得ない。地層処分では、そういう安定した岩盤を探して埋めるんです。

放射性物質が地下水に
溶け出すことはあり得ない?

深い地下には、酸素が少なくて金属がさびにくかったり、地下水の流れが非常に遅いといった特徴があります。1年間で数ミリしか地下水が動かないような場所も探せます。万が一、数万年後に溶け出した放射性物質が人間の生活環境圏に到達したとしても、そこから受ける放射線の影響はとても低いものでしかありません。

ここが気になる一問一答 〜 その3
「最終処分問題って、深すぎるかも」

(ページリード)
取材時間は、予定をオーバーして1時間半ほどだった。それでも決して十分に話を聞けたわけじゃないんだけど、伝えたいことは地下水のように湧きだしてくる。根気強く、もうしばらく読み進めてほしい。

最終処分地って
どうやって決めるんですか?

平成14年の12月から全国の市町村を対象に公募を行っています。その後、候補地として調査を進めるかどうかを決める「文献調査」、平成20年代前半をメドにボーリングなどで調べる「概要調査」、平成30年代後半までに地下に居室を作って行う「精密調査」を経て、最終的にひとつの処分地を決めることになります。最終処分が開始されるのは、平成40年代後半がメドとされています。

最終処分の場所って
1か所で足りるんですか?

最終処分施設の建設については、カラス固化体4万本以上を収容できる規模であれば建設や調査の費用はそれほど変わらないという試算が出ています。4万本以上の処分施設を作れば、1本当たりの処分の単価はそれほど変わらなくなるということですね。調査や建設には莫大な費用が必要ですから、1000本ずつ埋める施設を複数作るのは経済的な負担が大きくなるんです。現在は、目安として4万本以上の処分施設を1カ所作る計画を進めています。

処分開始の平成40年代までに
どのくらいのガラス固化体ができるの?

使用済み核燃料の量をガラス固化体に換算して、2005年(平成17年)12月末でガラス固化体1万9300本相当の廃棄物が出ています。今後、計画通りに発電を続けていくと、2020年(平成32年)には約4万本に到達します。実際には使用済み燃料を再処理して冷却した後で最終処分することになりますので、処分場の操業開始のメドは平成40年の後半となっているんです。

ということは、あと15年ほどで
4万本の処分場は満杯になる?

具体的な国の計画としては今のところこのくらいまで、ということです。本当の処分場の規模やスケールは各地が立候補して調査が進むなかでより具体的になってくるでしょうし。廃棄物そのものについての技術開発も進んでいます。そこから先は、さまざまな状況を鑑みながら考えていくことになりますね。

ここが気になる一問一答 〜 その4
「いろいろ不安がいっぱいなんです」

取材予定時間や、原稿の予定ページ数をオーバーしつつ、それでも聞きたいことはまだまだある。ざっくばらんに、いろんな不安をぶつけてみた。

プルサーマルって
危ないんじゃないですか?

プルサーマルがなぜそんなに目の敵にされるのか、科学的根拠がわかりません。そもそも、ウラン燃料100%でまかなう現在の原子力発電でも、ウランが燃える過程でプルトニウムが生まれて、炉内で燃えている。今の軽水炉でもプルトニウムは発電に寄与している状態にあるんです。MOX燃料は再処理して得たプルトニウムを活用して、ウラン燃料を節約するためにも必要なんです。当然、プルトニウム濃度が高い燃料を使うための規制もされています。

プルトニウムは
核兵器に転用できるでしょ?

それはあり得ないでしょ(笑)。プルトニウムを活用する「高速増殖炉」を作ろうということは原子力を始めた当初から日本では言っているんです。今、いろいろ問題があって停滞していますが、2005年の「原子力政策大綱」でも高速増殖炉の実用化を目指すことは明言されています。

いつか大事故が起きるんじゃ
ないかと不安なんですけど。

原子力発電所では事故に結びつく重要な機能は多重化されています。例えば、冷却水の循環が止まると炉内が熱くなってしまうので、ひとつの系統が壊れてもそれをカバーして冷却水を循環させる仕組みが用意されています。発電所周辺の住民のみなさんには、こうした機能も全て働かないといった「過剰」な想定をした非難訓練に参加していただいています。我々として悲しいのは、過剰な想定をした訓練を行うがために、逆に「そういう事態が起こるのではないか」という不安をみなさんに与えてしまうことなんですね。

六ヶ所村で大事故が
起きたら絶望的ですよね?

フランスのラ・アーグやイギリスのソープにある再処理工場で起きた事故は、先行の事例として非常に勉強しています。六ヶ所村の再処理施設では、まず、そうしたトラブルが起きないようにする。実際に同じようなトラブルが起きても事故に繋がらないようにする。そして、事故が起きても広がらないようにするといった方向で造られています。つまり、海外であった事例については、六ヶ所村では起こらない。もしくは起きたとしても被害を防ぐ機能が働くということです。

ここが気になる一問一答 〜 その5
「そうは言ってもやっぱり不安です」

海外で過去に起きたような事故が起きないような規制をしている、とは言っても、想定してないことになっちゃうのが「事故」でもある。疑り深く考えれば、やはり不安は尽きないのだが……。

たとえば、大量の使用済み燃料が
臨界事故を起こすとどうなるの?

それは施設を規制する立場で確認する問題ではないですね。我々は、そういう臨界事故は起きないように設計され、建設されて、トラブルが事故に繋がらないことをシミュレーションで解析して確認しているんです。また、防災対策として、ほとんどあり得ないような事故のレベルを想定した避難訓練を行っているんです。

原子力発電所の
耐用年数ってどのくらい?

原子力規制法などで、20年以上経った発電所はきちんと評価を受けることが義務づけられています。ただし、何年使ったから閉鎖するといったようなことは明確にはしていません。メンテナンスのコストや、必要な発電量の問題など、その発電所や原子炉を止めるかどうかは、国が「いつ止めろ」というのではなく、事業主さんが判断する問題です。

その曖昧さを
とても不安に感じるんですけど。

それは、藤田さんに話を聞いたからじゃないですか? 藤田さんも疑問があるならエントロピー学会とかじゃなく、原子力学会などの専門の場に出られればいいと思うんですけどね。というより、我々はそもそも反対派の異論に対していちいち答えないんですよ。だって、反対する人たちはとにかく「原子力を使うのがいかん」ってことだから、正直なところ議論にならないですからね。

だからこそ、ちゃんと
いろいろ知りたいんですよね。

最終処分の問題にしても、使用済み核燃料はすでに日本国内にあるものです。我が国のどこかで処分しなきゃいけないのが現実なんです。最近、こういう取材が増えてさまざまな議論が少しずつですが前身しているのかな、と感じています。マスコミの方にも、最初に来られる時はあまり前向きなことを書いていただけないことが多いんですが(笑)。何回も取材するうちにいろんな見方をしていただけることもありますし。我々としてはもっとしっかり広報していく必要があるなと感じています。実際、原子力発電所に見学に行かれると、安全確保の取り組みなどを実感して、考え方が変わるという方も多いですね。

My VOICE

地球が放射能の「ゴミ屋敷」に
なってしまうんじゃないの?

取材を進める中でつくづく感じるのは、化石燃料をばこばこ燃やし、原子力にまで手を染めた人間の悲しさだ。運転してて気持ちいいからとイタリア車のスポーツクーペに乗り、消費電力3KWのIHで作った炒飯が大好きで、仕事場のエアコンを時々消し忘れて帰ってしまう自分のことを棚に上げて断言すると、人間って「地球のガン」だ。

放射能が怖いと思う立場から、今回の取材では官僚の答えに「つっこみ」を入れたい部分はたくさんあった。でも、そこはグッと抑えて、できるだけ多くの「見解」や「現実」を紹介するように心がけてまとめてみた。

そもそも、世の中の「判断」には人の数だけ正解がある。原子力発電は、発電所のある自治体の住民(さらには電気を使って便利に暮らしている日本人)に大きな富をもたらしているのと同時に、大きなリスクになっている。立場や見方を変えれば、原子力発電は「賛成」も「反対」も正しい意見。夫婦喧嘩みたいに、どちらかが妥協して生活は続けていくしかない。そもそも、原子力発電を始めたことが人間の突然変異だったってことなのだ。

使用済み核燃料、そして高レベル放射性廃棄物の問題は、ときどきワイドショーなどで紹介される「ゴミ屋敷」を思わせる。常識で判断すれば意味不明。でも、1000年後の人類が地中にうち捨てられた膨大な量のガラス固化体を見つけた時、現代人はゴミ屋敷の主みたいに思われるに違いない。

ひとつのガン細胞として、自分には何ができるんだろう。たとえば原子力発電に反対するとして、どんな選択肢があるんだろう。今の状況では調べるほどに絶望的な気持ちになるのだが、諦めることなく、考えて、行動し続けていきたい。

寄本好則(三軒茶屋ファクトリー)

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